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伝えたいことを思いつくままに記します

明治大学と東海大学

明治大学東海大学

本来であれば現在、大学2年生の学年の生徒の話です。仮にA君としたいと思います。
A君が高校2年生の時、私は彼の数学の授業を受け持っていました。

最初の印象はとにかく意識が高い生徒という感じでした。今から必死に頑張らなければ目標の大学(偏差値表の上の方の大学)に合格できない、自分は周りの生徒とのんびり勉強している時間はないんだ…といった雰囲気を出していました。(あんまり授業も聞いていなかった)

A君はやたらと難しそうな厚手の問題集を持ち歩いていて、放課後、よく私の元へ数学の質問に来ていました。

しかし、その問題は難しすぎるくらいの難易度で、「高2でこんな難しい問題を演習するよりも、もっと基礎~標準の問題演習を反復した方がこの生徒の実情に合っているのではないか…?」と思いながらも、私も彼との放課後の勉強に1年間向き合っていました。

そんな彼もいよいよ高校3年生になり、大学入試を迎えました。毎年、2月になると廊下に大学合格者の一覧が張り出されますが、一向に彼の名前が張り出されません。
「あんなに頑張っていたのに。彼は大丈夫なのだろうか…もしかしたら」と心配になった私ですが、「卒業式の日に声を掛けてあげよう」と考えていました。
しかし、彼は卒業式の日に姿を現しませんでした。当時の担任の先生に聞くと、どこも決まらなかったそうです。


あの卒業式の日から一年半が経ちました。何度か彼のことを思い出すことがありました。

果たして自暴自棄にならずに頑張っているのだろうか。
そんな彼がつい先日、学校に現れました。


彼は卒業後、K合塾に入塾し、もう1年受験勉強を頑張ったそうです。
そして、今年の2月の入試で明治大学東海大学に合格しましたが、東海大学への進学を決めたそうです。偏差値表で考えれば明治大学への進学なのかもしれませんが、
浪人中に自らの将来についてもう一度、真剣に考え、パイロットへの道を選び、東海大学への進学を決めたそうです。それはもう、何かから解放されて清々しい表情をしていました。

彼は大学受験を振り返っての話をしてくれましたが、それが意外な内容でした。

自分は現役時代、やたらと自分の実力以上に難しい問題を解いていたが、あれは間違っていた。現役の時に芝浦工業大学を受験したが、全く記述の問題の答案を作ることができず愕然としたそうです。それらしい式は書くことはできても入試の答案になって
いなかった。でも周りの受験生は立派な答案を作ることができている。その時に、自分は基礎が全く身についていないことを痛感したそうです。そして、学校の授業を聞かずに自分の勉強に没頭していた自分をとても恥じたそうです。
K合塾時代は基礎基本に徹底に重点を置いて取り組み、見事に合格を得たそうです。

「先生も本当にお忙しいにも関わらず、あの時、自分の質問に付き合って下さってありがとうございました。」と深々と頭を下げてくれていました。

私は将棋部の顧問をしておりますが、将棋の世界ではこのような言葉があります。
「将棋は負けて強くなる」
将棋の世界に限らないことなのかもしれません。
人生では勝てる試合ばかりではありません。むしろ負けた試合から学び、気づく経験こそも人には必要なのかもしれません。


彼の表情を見て涙が出るくらい嬉しかったです。